個人情報とプライバシー
指導者向けの公開補足
学習本文に加えて、指導の視点・背景・授業での確かめ方を示します。どなたでも読めます。
指導の焦点
名前がなければ安全、という理解に留めない。他のデータとの照合で個人がわかる場合や、収集する目的に必要な範囲を考えさせる。
一歩踏み込んだ背景
個人情報保護法上の匿名加工情報などは、日常語の「匿名」と同じではない。識別子を消しただけで、法令の定める加工や取扱いの要件を満たすとは限らない。
授業での確かめ方
架空のアンケートで、年齢・所属・行動履歴の組合せから対象を絞れるか考える。実習は架空データを使い、不要な属性を集めない設計を比較する。
制度・規格等は本文末尾の参考資料も確認してください。
この単元でできるようになること
Section titled “この単元でできるようになること”- 名前がなくても個人を識別できる場合を説明できる。
- 利用目的に必要な項目と不要な項目を分けられる。
- 個人情報の共有範囲、保管期限、事故時の対応を考えられる。
情報は、組み合わせると見え方が変わる
Section titled “情報は、組み合わせると見え方が変わる”個人情報は、生存する個人に関する情報で、氏名などによって特定の個人を識別できるものなどをいう。他の情報と容易に照合して識別できるものも含まれる。法律には個人識別符号に関する定めもあるため、「名前が書かれているか」だけで判断しない。
たとえば「二年生、園芸係の代表、通学に特定の路線を使う」という記録は、一つずつなら該当者が多くても、組合せによって学校内の一人に絞れるかもしれない。識別のしやすさは、誰がどの情報を持っているかにもよる。
プライバシーは、私生活の情報をみだりに公開されないことなどに関わる。個人情報保護法の用語と完全に同じ範囲ではない。既に公開された情報でも、別の文脈でまとめて広めれば、本人の生活に大きな影響が出ることがある。
架空の体験講座で、集める項目を絞る
Section titled “架空の体験講座で、集める項目を絞る”休日の工作講座の受付を考える。目的は、定員管理と開催中止の連絡だ。この目的から、入力フォームを点検する。
| 候補の項目 | 検討の例 |
|---|---|
| 受付用の名前 | 当日の照合に必要な範囲を決める |
| 連絡先 | 中止連絡に使う方法を一つ選ぶ |
| 自宅の詳細な住所 | 郵送しないなら必要性を見直す |
| 生年月日 | 年齢区分だけで足りないか考える |
| 健康上の配慮事項 | 目的・必要性・閲覧者を特に慎重に決める |
病歴などの要配慮個人情報は、不当な差別や不利益を避けるために特別な配慮が必要で、取得などについて原則として本人同意を要する扱いがある。具体的な例外や組織ごとの義務は、最新の公的な説明で確認する。
集めた後の流れを先に決める
Section titled “集めた後の流れを先に決める”フォームには、何のために使うか、誰が管理するか、問合せ先などをわかりやすく示す。受付担当が名簿を見られても、講座の全参加者が見られる必要はない。共有リンクを知る全員に閲覧を許す設定は、意図より広い公開になる場合がある。
開催後は、必要な保存期間を確認し、不要になった情報を適切に削除する。複製した表や端末内のダウンロードも対象だ。集計結果だけを残したい場合は、個人が推測されないかも確認する。氏名を番号に替えただけでは対応表や他の項目から元に戻せるため、法律上の「匿名加工情報」になるとは限らない。
写真と位置情報にも目を向ける
Section titled “写真と位置情報にも目を向ける”写真には顔だけでなく、名札、制服、背景の建物、位置情報などが含まれることがある。撮影の了解と、ウェブ公開の了解は分けて確認する。本人が了承していても、一緒に写る他の人の希望は別だ。
誤って公開したら、拡散を止め、責任者に知らせ、公開範囲や閲覧の可能性を記録する。隠すために記録を消すのではなく、組織の手順に従って対応する。本人への連絡や委員会への報告が必要かは、情報の種類や事態により異なるので、担当者が確認する。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 個人情報 | 特定の生存する個人を識別できる情報など |
| 利用目的 | 情報を何のために使うかという目的 |
| 要配慮個人情報 | 病歴など、取扱いに特別な配慮が必要な情報 |
| アクセス権 | 情報を閲覧・変更できる範囲の設定 |
- 工作講座の受付で、郵便番号を必須にする提案が出た。必要性を確かめる質問を考えよう。
- 名前を番号にした参加者一覧を公開する前に、何を検討すべきか説明しよう。
- 集合写真を学校外のサイトへ載せるとき、撮影時とは別に確認する点を挙げよう。
問1の解答例を見る
「郵便番号を何の目的で使うのか」「受付に本当に必要か」「任意や、より大まかな地域情報では足りないか」と尋ねる。目的に必要な範囲だけを集める。
問2の解答例を見る
番号から本人を推測できないか、他の公開情報と照合すると特定できないか、そもそも一覧を公開する必要があるかを検討する。名前を番号に替えただけで匿名になるとは限らない。
問3の解答例を見る
学校外での公開について本人や必要に応じて保護者の同意があるか、公開先・期間・閲覧範囲、背景や名札から分かる情報を確認する。撮影への同意と公開への同意は分けて考える。
個人の識別は、情報の組合せでも起こる。収集を必要な範囲に絞り、目的、閲覧者、保管期間を決める。本人や周囲への影響まで考えて扱おう。