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データの収集:目的と出所を確かめる

指導者向けの公開補足

学習本文に加えて、指導の視点・背景・授業での確かめ方を示します。どなたでも読めます。

指導の焦点

集めやすいデータと、問いに必要なデータは同じとは限らない。対象集団・抽出方法・欠損の理由を確認する。

一歩踏み込んだ背景

回答数が多くても、偏った集め方による誤差はなくならない。欠損を一律に0へ置き換えると、存在しない測定値を追加してしまう場合がある。

授業での確かめ方

架空アンケートの任意回答だけで学校全体を代表できるか検討する。記録の単位・重複・欠損を点検し、修正の根拠を残させる。

制度・規格等は本文末尾の参考資料も確認してください。

この単元でできるようになること

Section titled “この単元でできるようになること”
  • 調査目的に合う対象と収集方法を考えられる。
  • 標本の偏りや記録の欠落が結果に与える影響を説明できる。
  • オープンデータの出所、利用条件、更新日を確かめられる。

データ収集では、最初に「何を判断するために、どの範囲について知りたいのか」を言葉にする。全校の通学時間を知りたいのか、バス通学の課題を調べたいのかで、必要な対象や質問は違う。目的が曖昧なまま記録だけ大量に集めると、役立たない項目を保存したり、回答者に不要な負担をかけたりする。

調査したい全体を母集団、その一部として選んで調べる対象を標本という。標本の集め方が偏ると、全体の特徴を適切に反映しないことがある。図書室に来る生徒だけに通学時間を尋ねれば、別の場所で過ごしている生徒の回答が欠ける可能性がある。回答者が自分で回答を選ぶ調査では、特に関心の高い人の声が多くなる場合がある。

調べたいこと 集め方の案 注意する偏り
全校生徒の通学時間 学年ごとに対象を分けて調査 欠席者や未回答者
自転車通学の課題 該当する通学手段の人に聞く 他の通学手段との比較範囲
校内の混雑時間 決めた場所と時刻に観察記録 観察者や天候、行事の日

例は調査計画を考えるための架空の場面であり、学校の実測値ではない。

データはアンケート、観察、実験、行政記録、センサー、公開データなどから得られる。方法によって分かることも限界も違う。アンケートは本人の経験や意見を尋ねられるが、記憶違いや質問の読み違いが起こる。センサーは連続的な記録を作れるが、校正不足や設置場所の違いが値を変える。実験は条件をそろえやすい一方、日常の環境と同じとは限らない。

質問文の表現も結果に影響する。「不便だったことは何か」と尋ねる質問と、「使いやすかった点は何か」と尋ねる質問では、思い出されやすい情報が異なる。回答形式、対象期間、単位、欠測値の扱いを決め、試しに少人数で確認する。いつ、誰が、どの道具で、どんな手順で集めたかを残すメタデータがあれば、後から解釈しやすい。

分析前にデータを整理・クリーニングする

Section titled “分析前にデータを整理・クリーニングする”

収集した記録には、表記揺れ、入力ミス、重複、単位の違い、空欄などが含まれることがある。分析の目的に沿って形式を整え、値の意味を確認し、誤記や重複を扱う作業をデータクリーニングという。例えば「徒歩」「歩き」のように同じ意味の回答が別々に記録されていれば、元の記録を確認した上で分類を統一できる。ただし似た表記でも別の意味を持つ場合があるため、機械的な置換だけで決めない。

異常に大きな値を見つけても、自動で削除するのではなく、入力ミスか実際の記録かを確かめる。欠損値を平均値で埋める、重複を削除するなどの処理は結果を変えるため、判断理由と処理前後の件数を記録する。元データを上書きせず、元の状態へ戻れる形で作業すると、後から手順を検証しやすい。整形はデータを「きれいに見せる」ためではなく、問いに合う形で誤解なく扱うための準備である。

行政機関などが、一定の利用条件の下で公開し、再利用しやすい形で提供するデータをオープンデータという。公開されているだけで、正確さ、最新性、目的への適合が自動で保証されるわけではない。作成機関、対象地域、調査時点、単位、更新日、欠損の扱いを確認する。

例えば地域の人口表を使うなら、年齢区分が途中で変更されていないか、集計の単位が町丁か市区町村か、合計に端数処理があるかを確かめる。別々の機関の表を結合するときは、地域コードや年度の定義が一致するかも確認する。データを出典なしで抜き出すと、後から誤りを検証できなくなる。

公開データであっても、利用規約やライセンスを確認する必要がある。個人を特定できる可能性がある情報や、秘匿処理が施された集計は、その条件を理解して適切に扱う。必要な目的を越えてデータを集めたり再公開したりしない。

用語 意味
母集団 調査で知りたい対象全体
標本 母集団の一部として調べる対象
偏り 集め方などにより結果が一方向にずれること
メタデータ データの出所、時点、単位、作成方法などの説明
オープンデータ 公開され、一定の条件で利用・再利用できるデータ
  1. 図書室にいる生徒だけに尋ねる調査で、全校の通学時間を推定しにくい理由を説明しよう。
  2. アンケート結果を利用するときに残しておきたいメタデータを三つ挙げよう。
  3. オープンデータを分析に使う前に、ライセンス以外に確かめることを二つ挙げよう。
問1の解答例を見る

図書室を利用する人の通学時間や生活条件が、利用しない人と異なる可能性がある。対象の選び方に偏りがあり、全校の生徒を代表しているとは限らない。

問2の解答例を見る

調査日時・期間、対象者の範囲と選び方、質問文や回答方法を残す。回答数や集計方法なども、結果を解釈するための大切なメタデータになる。

問3の解答例を見る

調査対象・収集方法、項目の定義や単位を確認する。更新日や欠測値の扱いも調べ、分析したい目的に適したデータかを判断する。